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ゲンペイ用語集 平家物語を読むにあたって『初心者がザックリ覚えておくと楽チン』な言葉や忘れがちな基本のメモです。<自分がよく忘れる事柄 思いついたら追加していく方式で。 あ/か/さ/た/な/は/ま/や/ら/わ ●あ行 ◆あっぱれ 感動詞「ああ!」(喜んでいるワケではない) ◆あさまし 「あきれ果てた!」驚きあきれる、情けない、がっかりだの意。 ◆鐙(あぶみ) 馬に騎乗の際、足をのせる馬具。 ◆家の子(いえのこ)郎等(ろうとう) 家の子=主に対して血縁関係にある者(遠縁・庶子など) 郎等=血縁関係なく主従関係にある。家の子より一段下。 ◆伊予守(いよのかみ) 源義仲が一時期こう呼ばれた。寿永2年の任官(平家追討の恩賞)による。 伊予国(上国)は多田満仲以来、源家の瀬戸内防衛における要だった為無理矢理賜ったとも。 ◆印地(いんぢ) 石をぶつけ合って戦うこと。祭礼や暴動、合戦でも行っていた。 専門職を「印地打ち」と呼ぶ。スリング系の道具も使われた。 現代の雪合戦的なモノではなく多数の負傷者や死人も出た。 ◆上差の矢(うわざしのや) 儀礼・奉納用に使う矢。主に鏑矢(四枚羽根)で、箙の一番上(表面)に斜めに差す。 実戦で使うのは「中差の矢」で征矢(三枚羽根) ◆箙(えびら) 矢入れ。矢を挿すところが箱状になっていて胡祿(やなぐい)より沢山収納できる。 空にするのは恥とされ、上差の矢を残したり小枝(梅など)を風流に差したとか。 ◆大臣殿(おおいどの) 平家物語で「大臣殿」といえば平宗盛のこと。「屋島の大臣殿」とも。 養和2年、内大臣の位までのぼったのでこう呼ばれる。 ◆御室(おむろ) 仁和寺のこと。または仁和寺門跡のことを指す。 六代門跡は守覚法親王(後白河院第2皇子)。法住寺合戦のどさくさで木曽軍に殺されかかる; ◆遠流(おんる) 遠島流罪。最も重い流刑で東は伊豆、西なら太宰府に送られた。 中流、近流という流罪もある。 ●か行 ◆返忠(かえりちゅう) 敵に寝返ったと見せかけてその敵を裏切り、元の主に対して忠義をつくすこと。 ◆蒲殿(かばどの) 蒲冠者(かばのかんじゃ)とも。源範頼(頼朝の弟)の呼び名。遠江国蒲御厨に育ったから。 ◆祇園精舎(ぎおんしょうじゃ) 祇樹給孤独園精舎(ジェイダ太子の果樹園にスダッタ長者が建てた出家者の施設、の意味) を略したもので、インドにあった「親や子の無い者を救済する」施設。 祇園精舎の鐘は玻璃と白銀で出来ており、死者が旅立つ時に鳴らされたという。 ◆木曽殿(きそどの) 源義仲の呼び名。信濃国の木曽谷で育ったから。 ◆国(くに) 延喜式で制定された「国」の単位。国勢による等級があった。 国名につく「上下」「前中後」は京からみた順番。上総は船便だったので逆になっている。 大国(たいごく) 大和国|河内国|伊勢国|武蔵国|総国(親王任国)|下総国|常陸国(親王任国) 近江国|上野国(親王任国)|陸奥国|越前国|播磨国|肥後国 上国(じょうこく・35カ国) 中国(ちゅうごく) 安房国|若狭国|能登国|佐渡国|丹後国|石見国 長門国|土佐国|日向国|大隅国|薩摩国 下国(げこく) 和泉国|伊賀国|志摩国|伊豆国|飛騨国|隠岐国|淡路国|壱岐国|対馬国 ◆刻(こく)=ほど 時間。 時刻は2時間を1刻として数えた。方角にも十二支が使われた。 子時 23時〜01時 丑時 01時〜03時 寅時 03時〜05時 卯時 05時〜07時 辰時 07時〜09時 巳時 09時〜11時 午時 11時〜13時 未時 13時〜15時 申時 15時〜17時 酉時 17時〜19時 戌時 19時〜21時 亥時 21時〜23時 ちなみに刻の4分の1は1點(点)=30分。辰の一點といえば17時〜17時30分指す。 ◆国司(こくし) 朝廷から「国」に派遣される行政官。任期は4年。平安時代には代理の「受領」を赴任させた。 戸籍管理と徴税が主な目的で「国」内の司法行政から軍事・祭礼まで全て任された。 ◆小松殿(こまつどの) 平家物語で「小松殿」といえば平重盛のこと。六波羅の小松第に住んだ事からこう呼ばれた。 「小松の内府(だいふ)」という通称もよく使われている。「内府」は内大臣の唐名。 ●さ行 ◆左典厩(さてんきゅう) 宮中の官職のひとつ「左馬頭(さまのかみ=従五位上相当)」の唐名。 吾妻鏡では義朝がこう呼ばれる。木曽殿も一時この官職にあった。自衛隊でいう幕僚長クラス? ◆山門(さんもん) 比叡山延暦寺。「山」「北嶺」ともいう。 ◆錣(しころ) 兜の鉢金から下に小札を威して(繋いで)垂らしたもの。 顔の左右の折り返し部分は「吹返し」 ◆寺門(じもん) 坂本園城寺(三井寺)。単に「寺」とも。 天台寺宗本山で元は比叡山末寺だが、山門とは仲が悪い。 ◆自然(じねん) 意図しない行動や出来事。ということから→万が一。 ◆尺(しゃく) 長さの単位。1尺=約30cm。1寸=約3cm。 ちなみに鎮西八郎為朝は身長7尺。 ◆十善の君(じゅうぜんのきみ) 十善帝王とも。日本においては天皇のこと。(大陸では天子) 仏教の「前世で10項目の善行をした果報により天子となる」という教えからきている。 ◆「〜条」 〜ので。〜けれども。 ◆相国(しょうこく) 平家物語で「入道相国」といえば平清盛のこと。 「相国」は太政大臣の唐名、その後出家して「入道」となったのでこう呼ばれた。 ●た行 ◆大衆(だいしゅ) 貴族の子弟で仏門に入った学生(がくしょう)、学侶。下級→堂衆(どうじゅ) ◆束(つか) 矢の長さの単位。計測者の手の大きさで異なる。 一握りの幅=1束=4伏。 指一本の幅=1伏(ふせ) ◆天台座主(てんだいざす) 天台宗(比叡山延暦寺)の最高位で、末寺全てを統括。 ◆東山道(とうさんどう) 京〜陸奥を結んだ道で「五畿七道」のひとつ。京〜鎌倉は馬で5〜7日、徒歩で12日。 江戸期に整備された中山道と決定的に違うのは、神坂から伊那を通って塩尻に至る点と、 上野国から北上する点。 ◆当時 今現在のこと。 ◆堂衆(どうじゅ) 元が土地の者などの下級僧。僧兵や雑役を担った。上級→大衆 ●な行 ◆南都(なんと) 奈良・興福寺。 南都北嶺といえば興福寺と延暦寺のこと。仲が悪い。 ◆な…そ【慣用語】 多少消極的な打消し。なんで…するかなあ?(…するなよ) 例:「痛う罪な作り給ひそ」あんまりムダな罪を作りなさるな ●は行 ◆八幡(はちまん) 都において「八幡」といえば石清水八幡宮のこと。「石清水」とも。 ほとんどの八幡社はこの岩清水八幡宮からの分霊。でも八幡宮の総本社は九州の宇佐八幡宮。 ◆兵衛佐(ひょうえのすけ) 平家物語で「兵衛佐」といえば源頼朝のこと。正確には「前右兵衛権佐」、単に佐殿とも。 平治元年13歳で右兵衛権佐(信西追討の恩賞)、その後慣習として長くこの通称が使われた。 吾妻鏡の頼朝の通称「武衛」は近衛府の唐名。 ◆方角(ほうがく)=かた。 北=子 北東=丑寅 東=卯 南東=辰巳 南=午 南西=未申 西=酉 北西=戊亥 ◆発心(ほっしん) 出家を思い立つこと ●ま行 ◆馬手(めて) 右手、右側。対義語は弓手。 ◆若しや(もしや) あるいは、の意味。 ●や行 ◆弓矢取(ゆみやとり) =武士。鎌倉期までは弓矢が主流で刀は予備的武器。 ◆弓手(ゆんで) 左手、左側。対義語は馬手。 ●ら行 ◆令旨(りょうじ) 元々皇太子・三后の出す命令書の事だが、親王・王・女院の命令書も令旨というようになった。 天皇が出す命令書を宣旨、上皇が出す命令書を院宣という。多少私的な意味合いが強い。 ●わ行 ◆渡辺党(わたなべとう) 摂津国の渡辺津から起こった源姓渡辺氏と藤姓遠藤氏から成る武士団。 傭兵的な性質をもち、御所警固をはじめ摂津源氏、伊勢平氏など複数の有力武家貴族に仕えた。 「渡辺一文字」の渡辺競、文覚(遠藤盛遠)も渡辺党出身。 |